菱屋カレンブロッグ

【谷町おもしろ履物店のblog】

新素材X

新素材X

 2015年の礫翔さんの個展で出会った「箔面」文様は氏が美術工芸品の高精度修復術やアートワークの中から生み出したオリジナル意匠です。400年経って朽ちて美しさを増した箔の再現柄です。

 それを見た時、いつものモノづくり魂が顔を出し始めました。まず最初にチャレンジしたのは金箔そのもので履物作りでした。しかしその試作品は「秒で」漉き破れ、路上の水たまりにも完敗。箔が剥がれ落ちました。そうですよね、金箔に厚みがないことを思い知らされましたが、金箔の草履を履くと気分が高揚したのは間違いありません。

 それで次にどうするかとなって革に加工できないかというアイデアにつながりました。これまたタイミングよく島精機の営業さんがデジタルプリントに挑戦している革の加工業者さんを紹介できるよということで和歌山へ。

 その社長さんも常に新しい柄を模索している開発力の高い方で新しい素材を作ろうという僕の意向はいわずもがな伝わりました。その時はどのような技術でこの「箔面」を表現するのか僕には不明でしたが、数日後2回目にお会いするときには「もうでけたよ。これやで」とサンプルができていました。グラビアロール捺染という製作方法を用いた「新素材X」でした。

 ずっと、かれこれ10年経つかもしれない。しまうま模様の金彩ふくらまし加工の素材から始まり、風呂敷生地の和柄、ナイロンコットン素材…ずっと新素材Xを探し求めていました。「他にはないオリジナル性に満ちていて、継続して生産できる汎用性があって、そして日本製である新素材X…」そのファーストサンプルの慇懃な輝きはそんな「新素材X」探しの一発回答となりました。

 

 あれから4年経って商品化の方向性も見えてきて、先日「琳派シルバー」という名称の商標登録を済ませました。「マットブラック」「カッパーゴールド」「いぶし銀色」の3色展開です。柄行きについてはもともと金屏風の背景ですし意匠権を取得するまではしていません。

 ので、同様の柄がどこからともなく発売されることはあるのだろうなと思っています。法律的な保護に期待できない分琳派シルバーシリーズに関しては本革にグラビアロール加工したファーストペンギンのプライドを持ってブランドつくりや商品つくりを心掛けなければと思う所存であります。

 かしこ

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